別れたおとこ

別れた男にあってしまった。もうあわないと決めていたのに。あたしが冷たくあしらえば、追ってきて、あたしが泣いてすがれば去って行き、何度も別れ、何度もくっつき、またあってしまった。

どうして。あたしを解放してくれないの?

男は俯きあたしの手を引っ張りベッドに押し倒した。いや、と口では拒絶の言葉が出たけれど、身体は正直で律儀に反応した。

何度も抱かれているその身体。匂いにあたしはまた、地獄に戻された気分になる。忘れようとしているのに。今つきあっている彼を好きなのに。好きな気持ちって分散できるのかな。と、考えてみる。どちらも好きなあたしは気が多いのか、器用なのかわからない。

またね。と、言い合い別れた。またね。またがあるのか。

あたしはまた、という単語をあえて反芻する。

また。期待しているあたしがいて嫌気がさす。