喧嘩

男がアパートに会いに来る。台風の中。もう会わない。言おうと決めていたが顔をみたらやはり言えなかった。あげく、忙しい、忙しいばかりいうので、

時間は自分で作るものだから。と、何気なく言ったら、

『だから、今、こうやって時間作ってあいにきてる』と、嫌味のひとつを言われた。

 辛かった。現場監督の男はひどく忙しい。わかっている。でも、忙しい中の一員にあたしも混じっているお判り、泣けてきた。

台風の中抱き合う。抱き合ってしまうと男の嫌味などどうでもよくなる。ずるい。

強いふりをする。

けれど忙しい中あいにきてくれただけでも嬉しいだなんて思ってしまう自分も嫌だ。

不倫の恋はほんとうに終わりがない。