うとうと
無職という呼称の仕事はいかにして気が重く、焦燥を促すのだろうと、頭を傾げた1週間と3日。
朝8時におきて、8時半に出社。あたりまえのようにしてきた、一連の流れが果たして今できるのかと訝しむ。目覚まし時計をかけずに眠ることの贅沢さったらない。が、今朝はなぜかスマホが唸り、はっ、と驚き手に取ると、娘さんからのLINEで、
《簿記の問題集忘れたから。たぶんテレビの棚にあると思うから…》
という内容のものだった。時刻は午前10時半を示していた。一体いつまでに簿記の問題集を持っていけばいいのか。あたしはすぐに返信する。
《なんじにいるの?》
5時間目あたりなら、もう少し寝て午後届ければいい。そう思い返事を待つもなかなか既読にならない。急を要するのか。娘さんはいつもこうだ。主語述語がない。
あたしは、あーもう!と唸りつつ、メガネにマスク
パーカーをはおい、娘の部屋にゆき簿記の問題集を探す。え?
簿記の問題集とやらが何冊もあり、あたしは口を開けたまま瞬時呆然となる。
どうしよう。なんだろう?日商?全商?1級、2級。わからない。
あたしはとりあえず簿記と表記されているもの全てを紙袋にいれ、娘さんの高校に車を走らせる。
事務室に、すみませんー。と、一声かけ、忘れ物届けにきましたぁー。と、間延びの対応。マスクのせいで声がくぐもっている。
見た目がかなり怪しいあたし。事務室のおばさんは、あたしを一瞥しすぐ視線をほどき、
なんねんなんくみ?
訊いてきたが、簿記の問題集に名前と組が書いてあったので、あ、書いてありますね。わざわざありがとうございますね。礼を言われてしまった。
あたしも、ぺこりと腰をおり、お願いしますと声をかける。
帰りに11時前だったこともあり、喫茶店でモーニングを食べようと喫茶店の駐車場に車を停める。
停めたタイミングでLINEがくる。
《5時間目だからね。間に合うようにね》
娘さんからのLINEだった。だから、5時間目は何時からなのよ。あたしはひとりごち、娘さんにLINEする。
《もう持っていったけどね〜》
また、既読にならず、あたしは嘆息を吐く。
気がつけば11時を過ぎていた。
モーニングも食べれず、あたしはランチに切り替えた。
なんだかな。眠い。怠惰になるなぁ。